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事実婚のパートナーが突然の事故で身体が不自由になったり病気で入院が必要になったり、認知症で判断能力を失った場合はどうなるでしょう。
考えたくないことですが、誰の身にも起こりうることですよね。
突然の事故で、身体が思うように動かなくなった。日々のさまざまなお金の管理や手続のことをパートナーに任せたい、と思っても備えをしていなければ、パートナーの代理で手続きが行えないなど、困るケースが生じることも…。
入院や手術の際、お互いの手術や治療の場に、パートナーに立ち会って欲しいと願う方は多いと思います。
病院、医療機関の取扱いによって違いはあるかもしれませんが、あらかじめパートナーを治療の場に参加してもらうことを承諾しておく旨を事実婚契約書に盛り込んでおくことや、委任契約の中で療養看護について締結しておくことが可能です。
また、認知症等で自分やパートナーに判断能力がなくなってしまうことも、将来的には考えられます。
厚生労働省のデータによると、認知症患者は、すでに65歳以上人口の10%(242万人程度)に達しているという意見もあります。
今後、高齢者人口の急増とともに認知症患者数も増加していきます。
2020年には325万人まで増加するといわれています。(厚生労働省ホームページみんなのメンタルヘルスより)
ご自身がそうなったときに、パートナーにお願いしたいと思っていても、ご自身のパートナーを後見人に指定できるとは限りません。
お互いが心身ともにしっかりと元気なうちに任意後見契約を結んでおくことをおすすめします。
事実婚契約書のなかでは、夫婦どちらかが、健康に不安を感じたときや入院したときは、法律婚に移行することを決めておかれたり、療養看護についての項目にも触れるケースが増えています。
また、普段から自身に何かあったときは、「パートナーにどのようにして欲しいのか」話し合って、意思確認しておくことも大切です。
お若いご夫婦の場合は、数年先ごとに見直すなど、いろいろな段階で定期的に話し合いの機会を設けることも、将来の不安解消のためには重要なことになります。
また、中高年の事実婚のご夫婦では、老後に備えて、遺言書などの作成とともに、委任契約(生前事務委任契約、任意後見契約)を合わせて残しておかれる方もおられます。
誰の身にも、起こりうることだからこそ、しっかりと備えをしておくことで安心が得られます。
法律婚と事実婚の違いを簡単に表にしてみました。
表の下の方の色付け文字の欄については、法律婚と事実婚との格差が表れている項目となります。
×となっている部分については、対策によっては、△または〇となる項目です。
法律婚 | 事実婚 | |
入籍の届出 | あり | ー |
戸籍 | 同一戸籍 | 別戸籍 |
住民票 | 〇 | 夫・妻 (未届) |
同居義務・扶助義務 | ○ | ○ |
生活費分担義務 | ○ | ○ |
貞操義務 | ○ | ○ |
関係解消時の財産分与 | ○ | ○ |
関係解消時の慰謝料 | ○ | ○ |
生命保険受取人 | ○ | △ |
配偶者控除 | ○ | × |
社会保険 | ○ | ○ |
遺族年金 | ○ | ○ |
子どもの親権 | 共同親権 | 父・母いずれか一方 |
相続する権利 | ○ | × 遺言書作成⇒〇 |
成年後見 | ○ | × 任意後見契約⇒〇 |
病院での手術同意・面会 | ○ | × 療養看護の取決⇒〇または△ |
死後の葬儀・埋葬・納骨等 | ○ | × 死後事務委任契約⇒〇 |
事実婚のパートナーであっても、生命保険の受取人や、医療保険等の指定代理請求人になれたり、遺族年金についても受給要件を満たせば事実婚であっても支給されるなど、夫婦としての認知度の高まりとともに、状況は変わりつつあります。
また、「同居義務・扶助義務」「生活費分担義務」「貞操義務」「財産分与請求権」「慰謝料請求権」といった権利義務は、事実婚にも考え方が適用されます。
しかし、注意が必要なのは、「当然に」ということではなく、お二人が双方に事実婚であるという意思確認ができていることが前提になります。 また、法律婚の配偶者と違って、税法上の配偶者控除が受けられなかったり、相続権がないことは将来の上での不安材料となり、法律上の権利が認められないことは否めません。
とくに中高年の事実婚のカップルの方には、数十年後にやってくるシニア生活において、対策や備えがないままでは、不安な事柄が生じることとなりますので、注意が必要です。
「相続する権利」「成年後見」「病院での手術同意・面会」「死後の葬儀・埋葬・納骨等」は上の表をご覧いただくと「×対応により△or○」となっています。
対策を講じておかなければ、権利がありませんので、遺言書や信託契約などで生前に準備しておいたり、任意後見委任契約等を締結して残しきましょう。
そうすることで、「△」や「○」になり、事実婚の将来の不安材料が軽減されます。
事実婚の夫婦には相続権がありませんので、まず大切なことは遺言書を残しておかれることです。また、老後に備えて奥様を委任者、ご主人を受任者とする委任契約を締結しておきます。移行型の契約を締結しておくことで、生前から死後までのこと、たとえば、生前の身のまわりのことや、万が一、認知症になった場合のこと、そして、お亡くなりになった後の手続、葬儀や納骨、供養のことまでお願いすることができます。実際に、中高年のご夫婦間では、このような備えをしておかれるケースが増えています。
パートナーの死後、相続権がなく、経済的に困ってしまわれ不憫な想いをさせないために遺言書を残しておくことは大切なことです。その一方で、お子さんや家族への配慮も忘れてはなりません。そのためには、遺留分にも配慮のうえ、ご自身が残しておきたいと思う財産の配分をしっかりと考えておくことが必要です。そして、ご自身の想いや気持ちがしっかりと家族が伝わるような温かみのある遺言書を残しておくことで、できるだけ残された家族が揉めないようにしておくことができます。
「パートナーと共に生きていきたいけど、子どもたちや親、兄弟が反対している。だから、事実婚という形を取ろうかと迷っている。」
このように仰る方は少なくありません。
離婚歴があり、お子さんが成人している中高年の方やシニアの方にとって、まわりのご家族の理解をなかなか得られず、ご自身も迷い悩まれているケースは多いようです。
そのようなとき「遺言書を残す」という将来への配慮の方法もあります。
ご自身の死後、残されたパートナーや家族が「相続」の場面から「争族」とならないためにも、その家族関係に合った財産確保の仕方を、きちんと決めておくことは必要なことであり、後に残された者にとっては安心が得られその配慮に感謝されます。
自分の死後も長年連れ添ってきた相手の生活や居所を確保してあげたい。
しかし、実際にあったご相談のなかには、長年ともに暮らしてこられた事実婚のご夫婦。
突然のご主人の死によって、相続権が無かったがために、奥様がたちまち、住む場所を奪われ、金銭的な不安に陥るという不幸に見舞われたことがありました。
このようなケースは、生前に信託契約を残しておくことで回避できる場合があります。
例 信託の登場人物
委託者・・・ご主人
受託者・・・成人した夫の前婚での長男
受益者・・・生前はご主人、ご主人の死後は事実婚の奥様
ご主人と長男で、生前に信託契約をしておきます。当初受益者をご主人本人にしておき、ご主人が亡くなったときの第二受益者をパートナーに設定しておきます。
長男には、パートナーの老後、生前中の生活保全を託すことをお願いしておけば安心ですし、パートナーが亡くなったときに、信託が終了する旨を決めておけば、最終的に長男や子どもへ資産を承継させることもできます。
昨今、結婚のカタチも多様化し、事実婚を選ばれるご夫婦が増えています。
しかし事実婚の場合、同棲や週末婚などの付合いの形と、ご夫婦の境目が曖昧なため、お二人の気持に温度差がある場合が少なくありません。
なんとなく同棲からスタートしたけれども、日常に流されて、改まってきちんと話し合えていないと仰るカップルがたくさんおられます。
お互いの将来のため、不安を抱えないようにしっかりと備えておくことは、パートナーへの優しさであり、夫婦としての責任と考えます。
事実婚だからこそ、きちんとした知識を持っていただき、しっかりとご夫婦で話し合っていただくことが、将来の安心へと繋がるものと思います。
安心した夫婦生活を築いていただく関係構築ためのお手伝いをさせていただければ幸いです。
***プロフィールより***
2007年より、自身の離婚経験を生かした離婚相談を行う。
離婚協議書の作成から、悩める方の心に寄り添うカウンセリングを目指すことで、口コミ等により定評をいただき、多数の離婚相談案件を取り扱う。
離婚相談からシフトし、夫婦関係修復、再婚、事実婚など、夫婦関係全般の相談をお受けするようになり、2014年より、Salviaマリッジカウンセリングを立ち上げる。
夫婦相談カウンセリング、そして、離婚しないための文書として、広く全国から結婚契約書の作成をお受けするようになり、現在に至る。
事実婚のパートナーに将来の不安を感じさせていませんか?
日々の生活に流され、「いつか考えよう。」と先延ばしにしがちですが、お互いへの愛情、優しさあればこそ、決めておくべきことはしっかりと、備えておきましょう。
曖昧になりがちなことを、きちんと整理し不安を解消したうえで、夫婦関係を築いていくことが幸せになるための秘訣です。
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